米国の確定申告について

  • 日本との大きな違い

一般に日本の所得税申告においては、雇用主が給与から所得税の源泉徴収をし、さらに年末調整を行なってくれるため、自営業者や高額所得者などの限られた場合を除き、個人が確定申告の手続きをするということは少ないと考えられます。これは裏を返せば、節税のチャンスがとても少ないということを意味するところでもあります。一方、米国における確定申告では、確定申告を個人で行なうことが義務付けられています。その代わりに、非常に多くの節税の可能性があり、税金対策を考慮に入れて自らのファイナンシャルプランを考えるのが、米国では 当たり前のことなっています。いかに税金を節約するか、米国国民は日常から考えて行動しているといえます。従って 、米国一時滞在者についても、滞在期間中の税金を意識しながら生活することが必要となります。

  •  アメリカの確定申告の現状

IRS Form 1040 Instruction によると、申告書作成にかかる時間は、すべての納税者の平均で13時間となっています。米国では、節税を追求するCPAなどの税の専門家と、いかに脱税を防止するかを考えるIRSとのいたちごっこが、今日まで繰り返され、米国税法は年々複雑なものになってしまっています。そのため、確定申告のソフトウェアや申告代行のビジネスが成り立つのが米国の現状です。有能な専門家などへ依頼する場合、多くの場合でその手数料以上に節税の恩恵を受けることが可能であるため、個人的に専門家へ相談することも米国では珍しくはないのが現状です。

  •  誰が申告義務を負うのか(ここでは 、通年米国以外の国に居住している非居住者(Non Resident)扱いの方を除いています)

では、いったい誰が米国では申告義務があるのでしょうか 。

米国税法上居住者(Resident)として扱われる人は、一定額以上の所得がある人が申告の義務を負います。

一方、税法上非居住者(Non Resident)として扱われる人は、所得の有無に関わらず、米国内で何らかの経済的活動を行っている人(Engage in any trade or business in the United States)が申告書の提出義務を負います。ここでいう経済的活動には学生、教師、研究者などの活動も含みます。

ただし、この例外として、F, J, M, Q  ビザのStudent , Teacher 及びTrainee に該当する非居住者(Non Resident)で、*米国源泉所得(U.S. Source of Income) がない場合は、所得税の申告書(1040NRなど)の提出義務が免除されます。 しかしその場合、Non Resident 扱いであることを申請するための書類(フォーム8843)を期日までに提出する義務があります。 従って、税法上非居住者(Non Resident)扱いを受けると、殆どの人が何らかの書類をIRS(米国歳入庁)に対して、毎年提出する義務があるということです。

(重要)2006年より、この税法上非居住者(Non Resident)に対する申告義務が緩和されました。米国からの就労所得(Effectively Connected Wages )によって申告義務が生じている非居住者(Non Resident)扱いの人で、その金額が人的控除額(Exemption )を超えない場合は申告義務が免除されます。

米国税法上居住者(Resident)・・・ 一定額以上の所得がある人

米国税法上非居住者(Non Resident) ・・・ ほぼすべての人 (フォーム8843だけの提出も含む)

・F, J, M, Q ビザのStudent , Teacher 及びTrainee に該当する方で、*米国源泉所得(U.S. Source of Income)(1042SなどのTreaty による免税分も含む)がある場合は、1040NR  もしくは1040NR-EZ8843 の提出義務があります。

・F, J, M, Q ビザのStudent , Teacher 及びTrainee に該当する方で、*米国源泉所得(U.S. Source of Income)がない場合は、フォーム8843のみを申告期日までに提出する義務があります。

・フォーム8843に関しては、J-2、F-2ビザなどで滞在する家族の分も含めて提出する義務があります。

 

*厳密には、米国源泉所得(U.S. Source of Income)のうち、
米国で源泉徴収を受ける所得をさしています。

(重要)F, J, M, Q  ビザのStudent , Teacher 及びTrainee に該当する非居住者(Non Resident)
→ フォーム8843の提出義務が毎年あります。

  •  いつ申告するのか

申告書の提出期限は、どの期間を会計年度とするかによります。自分の会計期間の終了日から4番目の月の15日が申告書の提出の締切日です。例えば、日本の会社のように3月31日で年度を終了させた場合は、4番目の月の15日、すなわち7月15日です。どの期間を自分自身の会計期間とするかは、自由に決めることができますが、一度決めたら正当な理由なしに変更することはできません。通常、米国社会の一般的な会計年度に合わせるのが簡単であるため、12月31日で年度を終了させ、4月15日まで に申告書を提出するのが一般的です。詳しくは、申告書の提出期限及び延長届けについて を参照下さい。

  •  申告しないとどうなるのか

    それでは、申告を怠るとどうなるのでしょうか。米国内で所得がある場合は、W-2や1099などを通じて納税者の所得情報がIRSなどの政府機関へ送られます。申告を怠った場合は、報告された所得情報から各政府機関は税金計算をし、税の不足分に対して延滞の利息とペナルティを加算し、納税者に請求をします。米国では、避けられない ものとして、「死ぬこと」と「税金」と言われているくらいですので、例え一時的な米国滞在であっても、米国の申告義務を遵守することが必要となります。

  •  時効について

一般に税金に関することは、法律に基づくものなので時効というものがあります。 連邦所得税の申告書に関しては、提出日もしくは、締切日(暦年の場合は4月15日)の遅い方より3年間です。従って、過去に申告した申告書のうち、Refund を請求できるのもこの期間のみです。また、IRS側も税金の不足額の発見に対して修正や支払い命令もこの期間内になります。ただし、Income の25%超が申告漏れの場合は、この期間が6年に延長されます。さらに虚偽の申告書や 申告書を提出しなかった場合には時効は適用されません。