在日米国市民、または在日米国税法上 居住者(Resident)の申告

ここでは、米国市民もしくは米国税法上居住者(Resident)である個人が、米国以外の国にいる場合の申告方法について重要な点を説明します。これらをExpatriates のTax Return と呼んだりもします。米国市民及び米国税法上居住者(Resident)は、全世界中からの所得を米国で申告する義務を負います。従って、たとえ日本で働いている場合でも、その日本からの所得に関して米国への申告義務があるということになります。
  •  Foreign Earned Income Exclusion

    一般に、米国市民または、米国税法上居住者(Resident)が米国外から得られる労働所得(年金などは除く)をForeign Earned Income と呼び、一定の条件を満たした場合に、それらを最大107,600 ドル(2020年)所得から除外することが許されています。また、その場合、フォーム2555 (PDF)を添付する必要があります。この措置を受けるための条件は以下のようになります。(実際にはさらに詳細の条件がありますが、ここでは簡単化しています)

    1.米国市民、または米国税法上のResident のTax Home* が米国外にあること。かつ、

    2.Bona Fide Resident Test もしくは、Physical Presence Test のどちらかを満たしていること。

    (参考) 年度別 Foreign Earned Income Exclusion Limitation

Year Limitation
2000 $76,000
2001 $78,000
2002-2005 $80,000
2006 $82,400
2007 $85,700
2008 $87,600
2009 $91,400
2010 $91,500
2011 $92,900
2012 $95,100
2013 $97,600
2014 $99,200
2015  $100,800
2016 $101,300
2017  $102,100 
2018 $103,900
2019  $105,900 
2020 $107,600
  •  Bona Fide Resident Test

    カレンダーイヤーの間(1月1日から12月31日)、常に米国以外に居住していること。この間に休暇で米国に一時的に滞在してもいいことになっています。ただし、あくまでも一時的である必要があります。

    (例)2020年11月1日から2021年12月31日まで、日本に滞在していた場合、2021年の1年間でBona Fide Resident Test を満たしたことになり、この場合はこの措置を受けることができる期間は、2020年は61日間分、2021年は365日分となります。

  •  Physical Presence Test

    連続する任意の12ヶ月間において、物理的に米国外に330日以上滞在していること。この場合は、たとえ一時的な米国滞在であっても、米国滞在中はこの日数にカウントされません。休暇中に米国以外の第三国への旅行などをしても、それらの日数は330日のカウントに含めてもいいことになっていますが、移動に24時間以上かかっている場合は、移動日はカウントしないルールです。また、この連続する12ヶ月間の選び方は任意で、この12ヶ月間を期間としてこの措置を受けることができます。

*Tax Home ・・・Tax Home の定義は簡単ではないのですが、一般には主たるビジネスの場所と考えることができます。上記のBona Fide Resident Test やPhysical Presence Test が適用される期間、Tax Home は米国外にある必要があります。

さらに、上記の条件を満たした場合には、一定額を超える住居費用(家賃、水光熱費、駐車料金、保険、税金、家具のレンタル費用など)を控除として使える場合があります。2020年は一日当たり$47.04を超える額などが対象で、家具などの購買費用や電話代は除きます。2006年からはこの控除に都市別の上限が定められております。

このForeign Earned Income Exclusion には、細かなルールがたくさんありますので、申告の際には、フォーム2555 Instruction (PDF)などで必ず確認の上で申告する必要があります。

  •  Foreign Tax Credit

米国市民、または米国税法上居住者(Resident)は全世界での所得が課税対象となります。従って、米国外から所得があるとき、米国外の国と米国からの両国で課税対象となり、いわゆる二重課税が発生してしまいます。この問題を解消するために、 米国外での税金分を一定の計算に基づき控除の対象とすることができます。この場合、Credit として控除するのか、Itemized Deduction として控除するのか選択ができ、毎年どちらを使うかは状況によって変更することが可能です。

必要なフォーム:

Credit としての場合 フォーム1116(PDF)

Itemized Deduction の場合 Schedule A

Credit として使う場合、以下の計算式の結果を上限額として、米国外での税金を控除額とすることが可能です。

米国での税額(Foreign Tax Credit を引く前)×外国源泉課税所得/全世界からの課税所得

上記の数式において、「外国源泉課税所得/全世界からの課税所得」の部分を計算するために、ある一定の計算のルールがあります。また、対象となる所得は、米国以外の国において、Income Tax に相当する税金を課せられる所得である必要があり、この場合は、Foreign Earned Income Exclusion のように労働所得である必要はありません。ただし、資産に対して課税されるProperty Tax などはForeign Tax Credit の対象にはなりません。さらに、Foreign Tax Credit はその年に使いきれなかった分を、将来や過去に繰越10年(Carry Over)や繰り戻し1年(Carry Back)できるルールがあります。

Itemized Deduction を使う場合は、計算は不要でそのまま支払った税金を控除として使います。ただし、Credit としての控除の方が有利な場合が多いと思います。

なお、Foreign Earned Income Exclusion とForeign Tax Credit の併用は可能ですが、その場合Foreign Earned Income Exclusion を超過する所得の部分において、Foreign Tax Credit の利用が可能になります。

(Foreign Tax Credit とAMT)
Foreign Tax Credit を使う場合で、AMT (Alternative Minimum Tax) が発生する状況では、ここで説明したForeign Tax Credit に加え、AMTに対するForeign Tax Credit を計算する必要があります。フォーム1116とAMT用のフォーム1116が必要になります。

(こぼれ話) Foreign Tax Credit を使うと税務調査を受ける確率が上がるというデータがあります。それは、Foreign Tax Credit の計算をするIRSのソフトウェアと、市販のソフトウェアの間での計算結果の不一致によるものだった、などという噂すらあります。 今日においてそれは改善されたともいわれますが、そのくらい手計算をするとForeign Tax Credit は少々面倒なものになります。従って、正しい知識を持った上でソフトウェアを使われるか、専門家に依頼されることをお勧めいたします。