Credit とは控除のひとつですが税額から直接控除するため非常に大きな効果があります。例えば、Credit として100ドル控除するということは、税金が100ドル減額されることを意味します。控除群1と 控除群2の控除は、税率 を掛ける前に引き算してしまうため、税額の減少分は、結局控除額×税率 となってしまうため、控除3に比べると効果が小さくなってしまいます。
以下に代表的なものを簡単に説明します。これらを使用するためには、個別に詳細なルールがありますので、ご自身で適用の可否をIRS Publication などで必ずご確認ください。
米国税法上居住者(Resident)の低所得者に対する還付可能なCredit です。還付可能というのは、税金の支払いがたとえなくても、Refund を受けることができる、つまりお金がもらえるということです。独身、既婚で合算申告、子供がいる場合など状況によって条件がかわってきます。子供をEICの対象とするためには、ソーシャルセキュリティナンバーを持っている(ITINは不可)など条件があります。税法上 非居住者(Non Resident)であると、このCredit を受けることはできません。
17歳未満(年度末時)の子供(Qualified Child)一人につき最大2,000ドルの控除が可能になります。ここでいう子供 (Qualified Child)は、米国税法上居住者(Resident)もしくは米国市民である必要があり、申告書上で扶養者として扱われている必要があります。なお一定額以上の高額所得者はこの控除に制限が生じます。Qualified Child については、控除について (人的控除・扶養者控除) を参照下さい。
13歳未満の扶養者に対するベビーシッター、デイケアなどの費用のうち、最大3,000ドル (2人以上の場合は6,000ドル)×所得に応じた割合(20%-35%)まで、税額控除が可能になります(2018年)。 また、13歳以上の扶養者や配偶者でも特別な介護が必要な方には適用される場合があります。この控除を得る場合、夫婦の場合は共働き (または、フルタイムの学生)である必要があります。
・Hope Scholarship Credit (現在は、American Opportunity Tax Credit となる)
この適用を受けるためには納税者は米国税法上居住者(Resident)でなければいけません。Hope Credit は、大学や 職業訓練学校などの最初の2年間(the first 2 post-secondary education years)の授業料及び関連費用に適用され、Credit として税額から直接控除できるため、大きな節税になる控除方法です。生徒一人当たり最大1,800ドルまで(最初の1,200ドルまで100%、次の1,200ドルまで50%)控除が可能になります。 ただし、少なくとも1学期間、ハーフタイムで就学している必要があります。調整後総所得(AGI)によって段階的に控除額が減額されます。 なお大学院は対象にはなりません。
・American Opportunity Tax Credit
2009年以降、上記 Hope Credit の適用範囲が拡大され、生徒一人当たり最大2,500ドルまで(最初の2,000ドルまで100%、次の2,000ドルまで25%)控除が可能になります。また、Hope Credit が大学や 職業訓練学校などの最初の2年間(the first 2 post-secondary education years)であるのに対し、American Opportunity Tax Credit では、最初の4年間(the first 4 post-secondary education years)の授業料及び関連費用に適用されます。
・Life Time Learning Credit
Life Time Learning Credit は、Hope Credit に比べて条件が緩くなりますが、最大2,000ドル(最初の10,000ドルのうち20%分)がCredit として税額から直接控除できます。これも調整後総所得(AGI)によって段階的に控除額が減額されます。 例えば、支払った適格授業料の総額が10,000ドルを超える場合などは、Life Time Learning Credit を使うのが最も有利になる場合が多くなります。
米国市民、または米国税法上居住者(Resident)は全世界での所得が課税対象となります。従って、米国外から所得があるとき、米国外の国と米国からの両国で課税対象となり、いわゆる二重課税が発生してしまいます。この問題を解消するために、外国で支払った税金分を一定の計算に基づき控除の対象とすることができます。この場合、Credit として控除するのか、Itemized Deduction として控除するのか選択ができ、毎年どちらを使うかは状況によって変更することが可能です。
Credit として使う場合の計算式は以下のようになります。
米国での税額(Foreign Tax Credit を引く前)×外国源泉課税所得/全世界からの課税所得
上記の数式において、「外国源泉課税所得/全世界からの課税所得」の部分を計算するために、複雑な計算のルールがあります。また、対象となる所得は、米国以外の国において、Income Tax に相当する税金を課せられる所得である必要があります。ただし、資産に対して課税されるProperty Tax などはForeign Tax Credit の対象にはなりません。さらに、Foreign Tax Credit はその年に使いきれなかった分を、将来や過去に繰り越し5年(Carry Over)や繰り戻し2年(Carry Back)できるルールがあります。
Itemized Deduction を使う場合は、計算は不要でそのまま支払った税金を控除として使います。ただし、一般には、Credit の方が節税する上でのメリットが大きいと言われます。
(余談: Foreign Tax Credit とAMT)
Foreign Tax Credit を使う場合で、AMT(Alternative Minimum Tax) が発生する状況では、ここで説明したForeign Tax Credit に加え、AMTに対するForeign Tax Credit を計算する必要があります。フォーム1116とAMT用のフォーム1116が必要になります。
(こぼれ話) Foreign Tax Credit を使うと税務調査を受ける確率が上がるというデータがあります。それは、Foreign Tax Credit の計算をするIRSのソフトウェアと、市販のソフトウェアの間での計算結果の不一致によるものだった、などという噂すらあります。従って、手計算をするとForeign Tax Credit はちょっと大変なので、正しい知識を持った上でソフトウェアを使われるか、専門家に依頼されることをお勧めいたします。