このページでは、年金プランについての大まかな特徴と、税金との関わりについて説明します。節税効果の大きい年金プランを考える際の参考となれば幸いです。
401(K) Plan は、米国の多くの企業が採用している年金プランです。日本でも終身雇用制度の崩壊によって、日本版401(k)を導入する企業が増えているようです。401(k) Plan の名前の由来は、IRC (Internal Revenue Code) のSection 401(k)で規定されているためです。401(K) Plan では、従業員が拠出する分と、雇用主が従業員の拠出額に応じて積み増しをしてくれる分(Matching)の2つが合わさって、年金プランの管理会社に拠出されます。このプランの最大の利点は、この拠出額に対して、年金を受け取るまでの期間、Federal Income Tax の課税対象とならないこととなります。つまり、給与を受取り、そこから401(k)に拠出するわけですが、Federal Income Tax 上は、あたかもその分給与を受取っていないように扱われます。ただし、将来年金を受け取るときにまとめて課税されることになりますが、税金の支払いを将来に繰り越す (Tax Deferred)ことが可能になります。これによって、通常であれば課税されてしまっていた税金分を、資産運用にまわす事ができ、さらにその運用益も年金を受け取るまで非課税とされるため、節税及び投資の観点から利用する利点はとても大きいと思います。 ただし、59 1/2 歳より前に引き出す場合は、10%の追加の税金が課せられてしまいます。
(参考: 資産の運用によって得られた利息、配当、資産の売却益などは、一部の例外を除き多くの場合で課税されてしまいます。)
従業員が拠出する分は、Federal Income Tax 上、年金を受け取るまで非課税とされますが、Social Security Tax 及びMedicare Tax は課税されます。
(具体例) Aさんは、会社が提供する401(K) Plan に加入していて、月に給与を4000ドル受けているとします。そのうちAさんは、給与の額の15%を401(K) Plan に拠出することにしていて、その拠出額のうち会社は15%積み増し(Matching)してくれるような年金プランとします。その場合、以下のようになります。
給与総額 $4,000 |
Federal Income Tax |
Social Security and Medicare Tax |
401(k) 拠出額(Aさん負担分) $600 ($4,000×15%) |
非課税 |
課税 |
会社の積み増し(Matching、会社負担分) $90 ($600×15%)
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非課税 |
非課税 |
401(K) Plan へのトータル拠出額 $690 |
非課税 |
上記参照 |
(参考) 401(K) Plan には、大きく Traditional 401(k) plans, Safe harbor 401(k) plans, SIMPLE 401(k) plans があります。
上の例から言えることは、会社の積み増し(Matching、会社負担分)は、給与がその分増えているのと同じである上、どの税金もかからない (ただし年金受け取り時に課税)ということになります。また、401(K) Plan は、転職した場合でも、転職先の401(K) Plan やその他の年金プランに移行(Rollover)することも多くの場合で可能です。
以下に、年間の給与 $40,000 の人が、401(K) Plan に$5,000 拠出した場合、受取るべくW-2の一例を示します。ラインの1で401(K) Plan への拠出分が既に差し引かれています。また、ラインの12で、コードDとして、401(K) Plan への拠出金額が表示されています。

IRA (Traditional IRA) とは、Individual Retirement Arrangement の略で、個人の退職年金プランの一つです。銀行などでも開設することができ、401(K) Plan と同様に拠出額及び運用益がFederal Income Tax 上、年金を受け取るまで非課税となります。ただし、59 1/2 歳より前に引き出す場合は、10%の追加の税金が課せられてしまいます。また、IRA (Traditional IRA)に拠出するためには、米国での課税所得があること、及び申告年度末において70 1/2 歳未満である必要があります。これも、税金の支払いを将来に繰り越す(Tax Deferred)ことが可能になり、通常であれば課税されてしまう税金分を、資産運用にまわす事ができ、さらにその運用益も年金を受け取るまで非課税とされるため、節税及び投資の観点から利用する利点はとても大きいと思います。実際に、申告書上での控除は、控除について (控除群1: Above the Line Deduction) を参照下さい。
以下の金額が一人当たり年間に拠出できる金額となります。
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IRA 拠出額の上限
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50歳未満 |
50歳以上 |
2006年 |
$4,000 |
$5,000 |
2007年 |
$4,000 |
$5,000 |
2008年 |
$5,000 |
$6,000 |
2009年 |
$5,000 |
$6,000 |
2010年 |
$5,000 |
$6,000 |
2011年 |
$5,000 |
$6,000 |
2012年 |
$5,000 |
$6,000 |
2013年 |
$5,500 |
$6,500 |
2014年 |
$5,500 |
$6,500 |
2015年 |
$5,500
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$6,500
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2016年 |
$5,500 |
$6,500 |
2017年 |
$5,500 |
$6,500
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2018年 |
$5,500 |
$6,500 |
2019年 |
$6,000 |
$7,000 |
2020年 |
$6,000 |
$7,000 |
ただし、自身または、配偶者が、雇用主の提供する年金プラン(401(K) Plan など)に加入している場合は、非課税扱いとなる拠出額に、所得やFiling Status に応じた制限がかかります。詳しくは、IRS Publication 590 を参照下さい。
Roth IRA は、IRA (Traditional IRA) のように、拠出額を非課税扱いとすることができませんが、将来年金を受け取るときに全額非課税扱いとなります。それぞれのIRAの特長は以下のようになります。
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IRA (Traditional IRA) |
Roth IRA |
拠出時 |
拠出額Federal Income Tax非課税 |
拠出額Federal Income Tax課税 |
運用益 |
Federal Income Tax 非課税(年金受取時課税) |
Federal Income Tax 非課税 |
年金受取時(59.5歳を過ぎて引き出す場合) |
Federal Income Tax課税 |
Federal Income Tax非課税 |
Roth IRA の年間拠出額の上限は、上記のIRA (Traditional IRA) と同じとなりますが、所得やFiling Status に応じた制限がかかります。また、IRA (Traditional IRA) とRoth IRA の両方に拠出する場合は、両方合わせた額がIRAの年間拠出額の上限を超えることはできません。
IRA (Traditional IRA) とRoth IRA のどちらが有利かは、人それぞれに違ってきます。以下に両者の選択をする際の一般的な考え方を記します。
① 将来年金を受け取るときには、就労所得がないはずなので、低い税率が適用されるため、今税金を払わずに将来に繰り越したほうが有利。
② 将来年金を受け取るときには、今以上の所得があるため、高い税率が適用されるため、今税金を払い将来年金として受取る金額を全額非課税としたほうが有利。
どちらを選択しても運用中の運用益は、年金を引き出すまでは非課税扱いを受けるため、利用する利点は大きいということになります。