日米租税条約 (U. S. Tax Treaty)

  • 租税条約(U.S. Tax Treaty)とは

米国と多くの国々との間では、租税条約(U.S. Tax Treaty)なるのもが多く存在します。これは当然のことながら、国ごとに違う内容となっています。また、米国との国交が盛んでない国には、この条約は存在しない場合があります。

これらの租税条約によって、米国への一時的な滞在者は 、米国において大きな非課税扱いの恩恵を受ける可能性が考えられます。従って、これらの条約に関しては、各自で適用の有無を必ず確認する必要があります。 勤め先の給与管理部門が、これらの条約に関して、正しい手続きをしてくれるとは限らないのが現状です。さらに、条約による非課税扱いは、自動的に得られるものではないため、たとえ源泉徴収されていなくとも 、条約によって非課税扱いである旨申告する義務があります

(重要) 2004年3月30日に、新日米租税条約の批准書交換が日米間で行われました。これによって、源泉所得税に関しては2004年7月1日より、新日米租税条約が適用されます。新日米租税条約の適用に関しては、特に注意が必要です。 新条約への移行に関しては、新日米租税条約第30条 を参照下さい。また、Treaty 新旧比較表 を参照ください。

  •  どの国の租税条約(Treaty)が適用されるのか

租税条約の適用を考える場合の大きな注意事項として、どの国の条約が適用されるのかという問題があります。なぜこの説明が必要かというと、租税条約 (Treaty)は渡米直前に税法上居住者(Resident)であった国のものが適用されるルールだからです。国籍ではないところが注意すべき点です。日本から直接渡米する日本の 居住者(Resident)であった方は、当然日米租税条約が適用されますが、米国入国直前の居住国が、日本以外である場合も十分考えられます。このような場合は、 渡米直前の居住国の租税条約が適用されます。

(例)日本国籍であるAさんは、2015からカナダに留学していました。2017年の初めから、米国内の研究機関で働くことになりました。この場合、2017年度の申告書でAさんの適用される租税条約(Treaty)はカナダのものになります。

  •  注意するべきTreaty (租税条約)の国

以下の国の税法上の居住者(Resident)の後で米国に入国し、その国の租税条約が適用される場合は注意が必要です。

・Germany    ・India    ・Netherlands    ・Thailand    ・The United Kingdom

これらの国の条約が適用されるTeacher 及びResearcher で、Compensation for Teaching or Research が非課税扱いを受ける場合(後で説明するTeacher, Researcher の租税条約)、もし、条約で定められた期間を延長してしまうと、すべての滞在期間において免税の恩恵が受けられなくなり、過去に遡って修正申告をして税金を納めることになります。

(例)日本国籍であるBさんは、イギリスに2年間留学した後、2006年の初めに、米国の研究機関でResearcher として働き始めました。Bさんの所得はその研究から得られており、イギリスの租税条約によって2年間非課税扱いになってました。当初は米国滞在は2年を予定してましたが、研究終了の目処がつかずに2008年の12月までの3年間滞在しました。この場合、3年目は条約による 非課税扱いが使えないばかりでなく、2006年、2007年も租税条約(Treaty)が使えなくなり、修正申告をして2006年、2007年の税金の支払い義務が発生してしまいます。

  •  主な日米租税条約(U.S. Tax Treaty Japan)

    • Teacher, Researcher としての給与 ( 旧Treaty Article #19 → 新Treaty Article #20)

      大学などの教育機関で、研究や教育目的で一時的に滞在するTeacher 及びResearcher は、その活動からの所得が米国入国日より2年間全額非課税になります。ただし、研究の目的が少人数の私的な目的であってはいけません。 

      (参考)米国の大学などへ研究留学する多くの場合で適用されておりました。

      ※ 新日米租税条約(2004年7月1日以降適用)の下で、上記の条約を利用するためには、継続して 日本の税法上Residentに該当している必要があります。従って、 日本で公務員の方、またはあらかじめ契約などによって、米国滞在予定が1年以下である方以外は、事実上この条約の適用はなくなると思われます。これに関して納得がいかないという方は、新日米租税条約第20条についての考察 も参照頂ければと思います。新条約への移行に関しては、新日米租税条約第30条 を参照下さい。

    • Researcher の受け取るGrant など ( 旧Treaty Article #20(1) → 対応する条文なし)

      (旧日米租税条約の内容) 
      Grant, Allowance もしくは 、Award を以下の機関から受け取っているStudent, Researcher は、それらに関して全額、入国日より5年間非課税になります。 

      (対象機関)Governmental, religious, charitable, scientific, literary, or educational organization

      (参考)NIH、NASAなどの研究者に多く適用されていたようです。

       今回の改正によって上記に該当する条文が大幅に削除されました。新日米租税条約の下では、2004年3月30日現在で、上記の該当者 (旧Treaty Article #20(1)の適用を受けることができる)である場合は、残りの条約適用期間(入国日より5年間)に関して、引き続き条約による非課税所得の適用が可能です。新条約への移行に関しては、新日米租税条約第30条 を参照下さい。また、Treaty 新旧比較表 も合わせて参照ください。

    • 大学などの教育機関で学ぶStudent のPersonal Service による所得
       (旧Treaty Article #20(1) → 対応する条文なし)

      (旧日米租税条約の内容) 
      入国日より5年間、年間2000ドルまで非課税になります。

       ただし、新日米租税条約の下では、2004年3月30日現在で、上記の該当者である場合は、残りの条約適用期間に関して引き続き適用が可能です。新条約への移行に関しては、新日米租税条約第30条 を参照下さい。

その他のTreaty 関連は、IRS Publication 901 U.S. Tax Treaties (PDFファイル)を参照ください。

  •  租税条約(U.S. Tax Treaty)の州税に関する扱い

租税条約(U.S. Tax Treaty)の州税に関する扱いは、各州ごとによって異なります。詳しくは、州税に関する注意事項 を参照ください。 また、条約の適用の有無に関しては、必ずご自身で、IRS Publication 901 U.S. Tax Treaties (PDFファイル)や各州のInstruction を参照ください。

旧日米租税条約

新日米租税条約(2004年7月1日より適用)

Treaty Article #19
Teacher & Researcher

その活動からの所得が入国日より2年間非課税。
Treaty Article #20
Teacher & Researcher

その活動からの所得が入国日より2年間非課税。
ただし、継続して日本の税法上Residentである必要あり。
Treaty Article #20(1)
Scholarship or Fellowship Grant

入国日より5年間非課税。
該当する条文なし。
Treaty Article #20(1)
Compensation during Training

年間2000ドルを上限として入国日より5年間非課税など。
該当する条文なし。
Treaty Article #20(1)
Gift from Abroad for maintenance, education, study, research, or training.
入国日より5年間非課税。
Treaty Article #19
Student or Trainee: Remittances or Allowances from Abroad
期間を問わず非課税。ただし、Business Apprentice の場合は、入国日より1年間の制限あり。
  •  補足: Scholarship, Fellowship 及びGrant について

補足として、Scholarship, Fellowship 及びGrant の税法上の扱いを説明します。Scholarship, Fellowship 及びGrant が学位取得目的であり、それらが直接的な費用(授業料、教科書代など)に使われた場合は、米国税法によって、租税条約を適用するまでもなく、非課税扱いとなります。ただし、部屋代、食費は直接的な費用に含まれません。 これに該当しないScholarship, Fellowship 及びGrant は、租税条約によって非課税とされない限り課税対象となります。

  •  注意点: J-1ビザ=2年間非課税か?

多くの研究などで留学されている方が適用される条約による非課税には、本ページの説明のとおり、大きく2種類があります。

1.Grant などの扱い → 旧Treaty Article 20(1) (NIH, NASA などの政府機関に勤める多くのResearcher の方々が適用)

2.Compensation for Services → 旧Treaty Article 19(新Treaty Article 20)に該当する大学などの教育機関で、Teacher, Researcher として活動する場合は、その研究活動からの報酬(役務の対価)が、入国日より2年間非課税となります。(大学などの多くのResearcher の方々が適用を受けています)

上記の違いは受け取る所得が役務の対価であるか否かです。米国税法では、役務の対価となる報酬は、まず課税と考えて間違いなく、これの例外の一つが2の場合 (旧Treaty Article 19による非課税)です。両者とも、もらう側としては同じ給与のように見えますが、1の場合は研究活動に対する補助金のような扱い、2の場合は役務の対価扱いです。 ただし、2004年3月31日以降渡米されている方は、新日米租税条約により、租税条約による非課税対象の方は減少したと思われます。

(注意) J-1ビザなどで米国内の企業にてインターンをしているTrainee に該当し、そこから給与を受け取っている場合は、上記とは異なり新租税条約19条により、Trainee として滞在を始めた日から1年を越えない期間、日本から支払われる給付に関して米国では非課税扱いとなります。

以上から、必ずしもJ-1ビザ=2年間非課税とはならないので、注意が必要です。

(新日米租税条約を理解したい方へのお勧めの本)
完全詳解 新日米租税条約の実務 -留意点と対応のすべて- 税務研究会出版局